理系企業の地位向上

理系企業とは、製造業、情報産業、技術系企業、営利の科学研究所等、多くの理系が活躍する企業です。理系企業の例としては、大手電機メーカー、建設会社、自動車メーカー、部品メーカー、電気系の会社、機械系の会社、化学系の会社、製薬会社、ソフトウェア企業、インターネット関連企業、IT関連企業、材料メーカー、電力会社、運輸会社、情報サービス業、独立の研究所、医療系の会社などが挙げられます。なお、最近では、理系が活躍する企業の種類は多様化し、メーカー以外にも広がっています。

理系国家とは、科学技術立国を推進し、多くの理系が活躍する国家を言います。日本は、典型的な理系国家です。

理系企業は、理系国家日本の国際競争力を支える企業です。しかし、理系企業は、中国、韓国、インドなど、他の理系国家と厳しい国際競争を強いられています。そのため、一部の非理系企業と比べると年収が低くなる傾向があります。

理系企業の年収が低くなれば、理系離れが生じます。理系企業は、理系の主な活躍の場であるからです。理系企業と理系は、密接な関係にあります。

理系企業は、日本経済を支える極めて重要な産業です。しかし、理系離れが深刻化しており、理系企業の将来の繁栄を、人材面から脅かしはじめています。

これは、日本経済に対する脅威です。理系企業の繁栄は、理系に人が集まることによって可能になるのです。

しかし、理系の地位の低下とともに、理系離れが起こりました。理系離れが起これば、日本の理系企業は、中国、韓国、インド等との競争において、人材面でハンディを負うことになります。

安い年収で何とかして理系企業に向かわせるという手法は、理系離れにより限界に達しています。

そこで、政府が、理系に直接お金を支払うようにして、日本の理系企業の地位向上を図る必要があるのです。

I.日本の理系企業の重要性

1.日本は、科学技術立国を行なう理系国家であり、理系企業なしで生きていけない

 日本は、科学技術立国を行なう理系国家であり、理系企業なしでは生きていけません。日本は資源がないので外貨を稼がなれば、資源や食料にも困るようになるのです。

 現在の豊かな日本からは想像できないかもしれませんが、理系企業がだめになれば、日本は終わります。理系企業がもたらす外貨がなければ、窮乏生活が待っているのです。

 理系企業は、製造業の裾野を広げます。製造業は、輸出によって外貨を獲得するのに、最も有効な産業なのです。だから、日本の製造業、物作りの重要性は、多く語られています。

 理系企業は、製造業を含み、また、製造業に関連する業種として、製造業の裾野を広げる、日本の生命線ともいえる産業なのです。

2.日本の理系企業は、毎年厳しくなる激烈な国際競争にさらされている 

 しかし、アジアの国などが発展するにつれ、理系企業の競争者が増えてきました。アジアの国が、経済成長のために、国策として科学技術を振興し、理系国家路線を採ることが多くなってきたからです。日本の理系企業は、激烈な国際競争に巻き込まれ、生き残るために必死です。

 中国、韓国、インド等の理系の人々(技術者等)は、安い年収で長い時間働きます。

 競争に勝つためには、日本の理系の人々(技術者等)も、安い年収で長い時間働くことになるのです。それだけではなく、正社員ではなく、派遣を使うことになるでしょう。リストラもたくさんするようになるでしょう。

 競争者が増えるにつれて、理系企業はどんどん割が悪くなっていきます。資源のある国は、文系企業で食べていけますが、資源のない日本はそうはいきません。

 そこで、理系企業の割が悪くなった分は、理系の年収を下げることで対処します。理系の給与を下げるだけでなく、理系をリストラするなど、血のにじむようなコスト削減がなされるのです。

 製造業では、中国、韓国等の製品の品質やコストが、毎年良くなっていきます。さらに、ソフトウェア、情報産業では、インドが莫大な人数のエンジニアを育てています。中国、韓国、インド等と、コスト競争をすれば、理系の年収は下げざるを得ません。

3.日本の理系企業の崩壊の兆し(理系、理工系離れ) 

 しかし、理系企業の年収が下がると、いわゆる「理系離れ、理工系離れ」が生じます。

 理系企業に興味があっても、一生涯、中国、韓国、インド等の技術者と命を削るようなコスト削減競争を続けなければならないことを喜んで受け入れる人は、減っていくのです。年収の低さで勝負しても、たとえば年収100〜200万円で働くアジアの国の技術者と勝負するのは、苦しいからです。

 命を削るコスト競争を避けるためには、理系国家日本は、科学技術立国を推進し、高付加価値な製品にシフトするとともに、知的財産立国を推進し、知的財産を強力に保護する必要があります。しかし、現状では対策は十分ではなく、多くの場合、価格競争に巻き込まれているのです。

 そのため、理系企業では、理系の年収を低くします。正社員を減らし、派遣にします。リストラも行ない、人を育て、理系の技能を伝承することにはコストをかけなくなります。人材の使い捨てを余儀なくされるのです。

 理系の卒業生の多くは、理系企業に就職します。よって、理系企業が高い給料を払う余裕がなくなっていくことにより、理系の地位は全体的に下がります。そして、理系離れ、理工系離れが起こります。

 アジアの国では、最も優秀な人たちが理系企業に行くのに、日本は優秀な人材が理系企業から逃避するようになるのです。このような傾向が続けば、日本の理系企業は、人材不足により、崩壊することになります。日本の理系企業への悪影響は、すでに理系離れという人材面に現れているのです。

II. 理系企業の崩壊を食い止めるには

1.理系企業は、理系に多くの年収を保証する余力がない

 日本の理系企業が、高付加価値な製品にシフトし、アジアの国も日本の知的財産権を尊重するようにすることが重要です。しかし、日本も他のアジアの国も、知的財産を強くする文化がアメリカよりも弱いのです。これを理系企業の力で変えられるかどうかは未知数です。

 変えられない場合、血で血を洗う価格競争が避けられなくなります。中国、韓国、インド等の理系が、年収100〜200万円で1日16時間働くといえば、日本の理系も同じようにしなければ勝てなくなります。終身雇用の保証もなくなります。

 さらに、インドネシア、ベトナム等の理系が、もっと安く働くといえば、理系の年収を、もっと下げなければいけなくなるのです。

 アジアの国は、理系教育に力を入れており、理系がどんどん増えていきます。今後、競争者は何倍にも膨れ上がっていくのです。

 それにともなって、日本の理系は、もっと、もっと、安く働くことが必要になるのです。

 日本の理系企業は、中国、韓国、インド等との価格競争に巻き込まれ、理系企業は、理系に多くの年収を保証する余力がない状態が続くのです。それを見越して、人々は、理系離れ、理系企業離れをしていきます。これは、日本経済にとって大きな脅威になるのです。

2.理系企業の崩壊を食い止めるには、人材の崩壊を食い止める必要がある

 日本の理系企業の崩壊は、人材から始まります。人材育成の掛け声をしても、その先には、血で血を洗う競争が待っているのです。

 理科の楽しさを教え、子供に理科教室を開いても、理科離れは防げません。理科が好きになって理系に進んでも、その後には、アジアの国の年収100〜200万円での長時間理系労働者とのコスト削減競争が待っています。

 日本の理系企業が、高付加価値な製品やサービスにシフトしても、アジアの国も追いかけてくるでしょう。品質、サービス、コストとも、日本の製品にそれほど遜色ないものが、だんだん増えてくるのです。

 日本の理系企業は、アジアの国の理系企業とのコスト競争に巻き込まれてしまう危険があるのです。

 そうなれば、理系企業には余力がなくなり、コスト削減のため、理系の年収を下げなければならなくなります。そして、理系離れが起こるようになります。すなわち、理系企業を支える理系が、人材面で崩壊するのです。

 これを何とか食い止めることは、日本の理系企業の未来、日本の未来のために重要なのです。

3.理系企業の基盤である人材の崩壊を食い止めるには、政府の援助が必要である

 アジアの国には、国力を増大させるために、国策として理系の優遇策をとっている国もあるのです。日本の理系企業は、国策で理系を保護し、安い理系を大量に要請する国の理系企業と競争しなければならないのです。

 日本の理系企業の崩壊を食い止めるには、政府の援助が必要です。特に、理系企業の崩壊が懸念される現在、人材面での援助が極めて重要となります。

 政府が、理系の学部の学費を下げるとか、理系の学校への奨学金を増加するなどの施策が必要でしょう。

 しかし、現実には、学費や政府の奨学金は、理系が他の理系国家との国際競争にさらされやすいことを十分に考慮したものになっていません。理系に進学すればお金がかかります。

 血で血を洗うコスト削減競争による理系の低待遇が待っているのに、理系は高い学費を支払うことになっているのです。理系離れは当然の現象となります。

 そこで、政府による理系企業を応援する思い切った政策が必要になるのです。

III.理系企業を支える人材への政府の応援

 政府が人材面で理系企業を支援する秘策は、理系企業を支える理系を、政府が直接的に応援することです。

 理系企業の力で、理系の待遇を引き上げるのは、すでに厳しい国際競争にさらされている理系企業に、さらに大きな負担をかけることになるからです。

 日本の理系企業は、日本にいるすべての人々の利益になります。政府が税金を投入して、理系企業のアキレス腱である人材面での環境整備を行なうことが、日本の理系企業の崩壊を食い止め、その地位を向上させるために重要です。それは、結局は、日本にいるすべての人々の地位向上につながっていきます。よって、これは理系国家である日本の税金が投入されるべき問題なのです。

 政府の援助の例としては、理系の学生への奨学金や、理工学部の学費の免除などが挙げられるでしょう。

 さらに、優秀な科学者、技術者は理系企業にとって非常に重要です。優秀な科学者、技術者には、惜しみなく多額の国家予算を投入することが必要でしょう。

 たとえば、優秀な科学者、技術者を毎年1万人選び、1人1億円を与えることが考えられます。この計画については、以下のサイトが詳しく論じています。科学技術振興の秘策−科学者、技術者の年収1億円1万人計画  

 必要な予算の総額は1兆円にしかなりません。日本の科学技術予算を増額すれば、十分に可能な額です。そして、これは理系企業の地位向上に大きな効果があるでしょう。

 日本の理系企業が、自力で理系の給料を上げることには限界があるでしょう。中国、韓国、インドの理系との年収の差が、コスト削減に響いてくるからです。そこで、日本政府が、理系の年収に援助をし、日本の理系企業が人材面から崩壊しないような環境整備を行なう必要があるのです。

IV.日本の理系企業と理系の連帯  

 日本の理系企業は、理系(理工系)と連帯して、日本の地位向上を図る必要があります。理系企業が、国際競争で追い詰められるあまり、理系を安く使い捨てるのは、理系離れを生みます。日本の内部に理系企業と理系との血で血を洗う争いが起こることはできる限り避けるべきでしょう。

 日本の分裂を避けるため、日本の理系企業と理系は、同じ理系として、強力に連帯し、お互いに地位を高めあうことが必要です。それが、理系国家日本の地位向上につながります。日本は、科学技術立国を推進し、理系国家として国際貢献をするのです。

 理系国家とは、科学技術立国を推進し、理系の人が活躍する国家を言います。アジアの国には理系国家を目指している国が増えています。科学技術立国とは、科学技術により国を成り立たせていくことです。これは、理系国家思想の1つでしょう。

 理系企業の繁栄のためには、理系が頑張ることが必要です。逆に、理系の地位向上のためには、理系企業が政府に働きかけていくことが重要なのです。

 日本の理系企業と理系(理工系)の連帯のためには、日本の理系企業が、目先の競争に勝つために、理系の年収を下げることは避けなければなりません。それは、自分で自分の手足をおいしそうに食べるようなものです。長期的には、理系企業離れ、理系離れを生み、人材面から日本の理系企業を崩壊させるからです。

 しかし、理系企業は、国際競争に勝ち抜くために、厳しい台所事情があります。そこで、政府の役割が重要になります。たとえば、理系企業が、100万円の対価を支払えば、それが政府により10倍に増幅されて理系に支払われるようにすれば良いのです。そうすれば、理系企業の台所事情も痛まず、また、理系の待遇も向上します。すなわち、理系と理系企業の地位が同時に向上するのです。

 理系国家日本、理系企業、理系(理工系)の3者の大連帯が重要です。そして、日本の理系企業を、理系が強力に人材面から支え、科学技術立国日本を実現していくことが重要となります。

V.日本、日本の理系企業、理系の三者の連帯によるそれぞれの地位向上

 理系国家日本の地位向上には、日本の理系企業の地位向上が欠かせません。

 日本の理系企業を人材面で支え、理系企業の地位向上を実現するために、理系(理工系)の地位向上も欠かせないのです。

 日本、日本の理系企業、理系(理工系)の三者は、大きな連帯をして、それぞれの地位を高めていく必要があるのです。

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